やっぱり小町王国を創ろう


平成5年(1993年)5月20日 OPINION掲載

二瓶 晃一 (執筆当時31歳)

 ●あぶくま高原連合王国

  

  先日、常葉町役場の管野さんに会う機会が あった。彼はカブトムシ自然王国の仕掛け人である。 「二瓶さん、以前に話した『あぶくま高原連 合王国』の構想、実現しましょうよ」管野さ んは「少年の目」で私に言った。昨年、小野 町商工会青年部でサマージャンボリーを「小 町王国建国宣言」と言うテーマで開催した。 その時「おのおの」に掲載した「小町王国建国の提言」を管野さんに送っておいたのだ。  

 

 あぶくま高原連合王国とは、常葉町に続き 大越町・滝根町・小野町でも独立国をつくり 連合して活動しようとする企画だ。「テーマ独立国は全国にたくさんあるけれ ど、それぞれ独自のテーマ独立国が協力しあ って連合王国をつくるなんて言う発想、ない ですよ。これいいですよ」そう言われて私も まんざらじゃない顔をしていると「早く、小 野町で小町王国を創ってくださいよ」と、管野さんにそう言われて、はたと現実に帰った。

 

 そう、あれからもう一年近くたつのに、まだ 何も進展していないのだ。

「小町王国、なんとか創んねえとなあ」私 が何気なく友人の前でつぶやくと、

「国王とか閣僚とか誰にすんだよ」と友人は私に尋ね る。

「そりゃあ考えてなかったなあ…国王は 町長になってもらうとしても…とりあえずは 閣僚国は決めないでおいた方がいんじゃない か」

 

「なんだよそれ。普通そう言うのは国王 とか閣僚とかきめるのが先じゃないのか」

「いいんだよ。閣僚とか初めに決めちゃうと 型にはまっちゃうから。なんで俺がならないんだとか、あーだこーだ言われちゃって。青年 部から人選すると「なーんだ、あれは青年部 の事業なのか」と、なっちゃうし、そのへん を気をつかって人選すると、変に団体のあて職みたいになっちゃうし、みんなの心の中に 王国がイメージされてくればそれでいいんだ よ。」

 

「またそんな事言ってー。おまえはそれでい いかもしれないけど、普通の人はね、なにか 形のあるものを見て想像するものなんだよ」 「ちゃんと俺なりにみんなが王国の存在をイ メージするアイデア考えてるよ」

 

「なんだよそれ?」

「それは、パスポートと王国広場だよ」 

 

●準・町民の発想

 

  実は、パスポートと言うのは、先日異業種 交流会の招きで講演に訪れた、只見町の木津さんの受け売りだ。木津さんはディズニーラ ンドのパスポート券(その券で一日中どの乗 り物でも、どの催しでも利用できる)からヒ ントを得て、自分達の所有する山に自由に入 って山菜取りやきのこ取りまたは森林浴など あそべる「グリーンパスポート」を考えたの だそうだ。

 

 私はこれを「まち」におきかえて 「まち」を自由にあそべて、何か特典(例え ば宿泊割引とか交通機関や観光施設の入場割 引などを)をつけて売り出したらいいと考え ている。

 

「なんだくれるんじゃなくて、売り出すのかよ。町民に配るんじゃないのか」

「町民にも配ればいいけど、いちばん重要な のは準町民を増やす事だよ」

「準・町民って何だ?」

「小野町に住んでいない町民の事だよ」

「なんだそれ? 小野町に住んでいるから町民 なんじゃねえか?」

「小野町に住んでいなくても、小野町に関心 がある人を小町王国の国民という準町民とし て登録していく。そう言う人たちに小野町や あぶくま高原各地の情報を定期的に流してあ げるのさ」  

 

 前述の木津さんの話で一番関心し、なおか つ驚いた事は「ウッドランドたもかく」と言ういわゆるタウン誌を出して主に都会の人たちに講読してもらっていると言う事だ。たも かくと言う木工組合の機関誌として手書きの コピー70部を印刷して始まったと言うタウ ン誌は、小野町商工会青年部が「おのおの」 を発行する数年前から始めただけなのに、ある意味で同じ様な目的で始まった「おのおの」が今だにタウン誌として定着しないのとは雲 泥の差だ。「おのおの」の発行に携わる一人 としてほんとうに反省しきりである。

 

 木津さ んはそういうタウン誌を出す事で「準・町民」 を獲得しているのだ。  小野町でも小町王国をつくり、パスポート を発行し、小野町の情報を定期的に流す事で 「準・町民(つまり小町王国の国民)」を増やせれば、産業や観光の基礎体力が町 に蓄積されていくと思う。

 

 例えば、新しい商 品開発をした時、それを漠然と都会に売り込 まなくてもいい効率の良さがあるし、特に観 光と言う観点から見れば、どやどやとやって くる一過性の観光客を相手に大きくその時だけの銭儲けをすると言うのもそれはそれ でいいかもしれないが、リピーターとしての 「準・町民」を少しづつ増やしていく事のほ うが町全体のメリットがあるように思う。

 

 観 光(または保養)に訪れる人たちがそこに住 んでいる人達ととけこんでいくのが理想だ。 人口が急激に増えていけば生活環境が悪化し ていくが、この方法だと生活環境は守られ、 ある意味で人口増加と同様のメリットがある と思う。

 

 考えて見れば、田舎の人は人口が少ない事 を最大級の悪い事としているが、ゴミゴミし た都会より人口が少ないほうが生活環境はい いのに決まっている。逆転の発想でいけば、 人口が減る(増えない)事も、町の生活環境を守ために、人口調節して人材を都会に出向させていると思えばなんて事はない。

 

 その中 でマイナス面である都市機能や社会資本、そ れにやわらかい部分の「アミュズメント(遊 び)」や「エンターテイメント」を、アイデ アを出して的確に効率良く魅力あるものにし ていく事が地方の行政の仕事であるし、私達地方に住んでいる人間が考えなくてはならな い事だと思う。

 

 ●小町王国リカちゃんランド 

 

「パスポートはわかったけど、広場ってなん だい?」

「王国のシンボルとなるもので、イベントな んかをやるところさ」

「それってどこなの?」

「もちろんリカちゃんキャッスル前。リカち ゃん通りを歩行者天国にして、小野町商工会 館とJA小野とを使いそれら全部のスペース を「小町王国リカちゃんランド」と呼ぶのさ 。駐車場は多目的集会施設と小野中のグランド を使えばいい」  

 

 リカちゃんキャッスルが出来上がってくる のを毎日見ながら「ここはイベントゾーンに できるぞ」と、常に考えていた。確信をもっ て言えば、春祭り(流し踊り)も夏祭りもこ こで十分やれる。やれるだけでなく、今まで なにか「身内の騒ぎ」に過ぎなかった祭りをビッ グ・イベントとして演出できる様になる気が する。

 

「そりゃあいいと思うけど、まず無理だろう な」

「どうして?」

「だいたい夏祭りなんて7月にならないと、 内容が決定しないんだよ。決定したらあと一 ヵ月しかないと言う事になって、それじゃあ 今年も昨年と同じと言う事で、てな事になる んだよ」

「一つのアイデアが「悪い」とか「良くない」と思うなら別だけど、いいと思ったらやるだけの事 だろ」  

 

 さて、これを読んでいるみなさんはどう思 われますか? このアイデア、いいと思いませ んか?このアイデアが実現するかどうかは、 あなた、そう今、この文章を読んでいる、あ・ な・たの行動次第です。 

 


 「そう言えば、こないだ宍戸会館で結婚式 をした人が、リカちゃんキャッスルの前で記念に写真を撮りたいからといって、ウエディ ングドレスで写真とってたらしいよ」

「へーそりゃあおもしろいなあ」

「そーだ! いっその事リカちゃん教会っての創ってそこで結婚式をあげて、披露宴を宍 戸会館でやるってのはどうだい」

「おもしれー。リカちゃん結婚式で売り出す のか。軽井沢の星野遊学堂よりうけるかもしれない!宍戸さんに話てみたら」  

 

無謀とも思える私達の夢の話は、つきるこ となく湯水のようにあふれてくるのだった。

 

 

 

 

 

 「お詫び」 前号でつづくとなっている、「イタリア旅行 記」は筆者の勝手な都合で今回はお休みです 楽しみにしていた方(いないか)すみません 筆者の気力があれば次回以降に掲載したいと 思います。 (Jリーグ開幕で、何かと原稿 が遅れている二瓶)