「駅」


平成4年(1992年)12月20日 OPINION掲載

二瓶 晃一 (執筆当時30歳)

 私の旅のはじまりはたいていの場合、駅だ。

  実は、この原稿も駅のホームにたたずみながら下書きを書き始めている。私の家が駅に近いという事もあるが、東京まで一番早い乗り継ぎで2時間15分で行く。 仙台ならば1時間20分位だ。東京で友人達 に会うと横須賀の友人が家を出てきた時間と あまり変わらないので皆ビックリしたりする。

 

 

 都会に時間的に近いからどうと言う事もないが、一人で出掛ける事が多い私にとっては旅と言えばまず列車の旅なのだ。そして、もっ と多くの人に列車というものを再認識しても らいたい気がする。


 列車に限らず、公共交通機関(バスなど) を利用する人が減っている。そのために列車 もバスも本数が激減してしまって本当に 利用しなければならな人や利用したい人にとって大変不便で困っている事も多い。その上 利用者のために情報というのが少なくて、もう少し利用者を増やしたいと思うのなら、する 事がたくさんあるように思う。

 

 バスは小野町 では3社走っているが、それらをまとめた路線 表などは今まで見た事もなく、どこをどうバス が走っているのかわからない。  列車について言えば、つい先日まで私は日 曜日にでる船引行の臨時列車が船引で乗り換えれば郡山までいけるというのを知らなかっ た。町内で配布される時刻表には「船引行」 としかのってなくて、8時50分以降は11時まで列車がなく、うちに泊まって次の日に 会津・猪苗代方面に行く観光のお客さんが困 惑するという事がたくさんあった。  

 

 以前にある長野県の村がバス路線の廃止の 問題で奮闘した記事が新聞に載っていたのを 読んだ事がある。

バス会社が赤字解消のため に路線廃止を決定したが、村が路線を維持す る最低限の補助金を出し、そのかわりそれ以上 の売り上げがあれば村の収入になるという事 にした。

 

 村長以下村の役場職員が今までのバ スの発着時間や村の唯一の駅の列車の時間、 そして利用者の分布や年齢層などいろいろな 調査を行なったところ、列車の発着時間にバス が間に合わなかったりいろいろな点がうかび あがったという。それらをできるだけ改善し てそして村役場の広報車で村のバスを利用し てくれるように広報活動を行なったところ、な んとか軌道にのってバス路線が維持されたと の事だ。


 

 小野町のバス路線や磐越東線の経営状況が 正確にどうなっているのかなどは知るよし もないが、乗る人がいないからと言って本数 を減らすのではなく、乗る人を増やすように 行政も利用者も会社もみんなで考えていくよ うにすべきではないかと思う。

 

 バスを利用す るしかないようなお年寄りのために、市街地 の路線はすべての病院をまわるように組んで やるとか、スポーツ少年団や学校の部活をし ている子供たちのために学校とスポーツ施設 をまわる最終バスの時間と路線を考えてやる とかいろいろあると思う。  

 

 大都会では、金儲けのためにそれらのサー ビスをおこなう人がいるためにどんどん便利 になる。しかし、小野町では営利だけに期待していたのでは住民の福祉は向上しないし、 まちは楽しくならない。駅前再開発と言って も駅そのものが機能しなくなってしまったら 「駅前」ではなくなってしまうのだ。

 

 都市計 画もいろいろと検討されている様だが、都市 というのは、ビルディングがたちならぶ姿を いうのではなく、そこに集まる人と情報と物と をつないでいく「機能」をいうのだと思う。 そんなちょっと今までおろそかだった「機能 」と言うものをみんなで考えていけたらと 師走の風景を次々と運んでくる新幹線の窓の そばで思っている。

 

 MERRY CHRISTMAS AND  A HAPPY NEW YEAR