「川」


平成4年(1992年)6月20日 OPINION掲載

二瓶 晃一 (執筆当時30歳)

 最近テレビを見る時間が多くなった。新聞 のテレビ番組欄を見ると「これ見たいなあ」 と思うものがやたら多いのである。 なかでもNHK、特にNHK教育テレビは 昔に比べて格段に「垢抜けて」いておもし ろい。

 

 先日も土曜フォーラムという番組で「 地球にやさしいまちづくり」を実践する東京 都世田谷区でのフォーラム特集を見た。タイ トルにひかれて見始めたのだが、見ているうち にどこかで見た人が出演しているのに気付い た。一人は、埼玉県川口市の主婦の松田さん。 この方は川口市のリサイクル運動の中心と して活躍している方で、2年前の平成2年2 月に小野町商工会婦人部主催の「ゴミのリサイクル 講習会」に講師として小野町を訪れている。このフォーラムは、パネルデイスカッション の形式をとっていて、松田さんもそのパネラ ーの一人として出席されていた。

 

 パネラーに はその他いろいろな人が出席していたが、環 境運動の先進地であるドイツからの招待者も パネラーとして出席していた。 私の知っているもう一人の人というのは、 このドイツからのお客様の隣に座って通訳し ていた女性である。彼女は、昨年の11月に ドイツからのホームステイを受け入れた時に 通訳で来ていた平野利永子さんだった。  

 

 たとえ、ブラウン管の中とはいえ自分の顔 見知り(と言うほどでもないが)の人が一人 ならず二人も全国ネットの番組にでていると 何だかとっても嬉しくなり思わすミーハー気 分に浸ってしまう私だが、小野町にいてもそ んな人の話を聞いたり、出会ったりできると いうのだからこの「まち」も「そんなバカにし たもんでもないぞ」などど自画自賛していた 。

 

 世田谷区の活動で一番おもしろいと思った のは、「川」の事例である。大都会東京では もう川がそのままのかたちで残っている事は 皆無と言っていい。だが、その子供の事頃遊ん だ川を取り戻そうとコンクリートで固められ た川のほとりをわざわざ壊して土と草の土手 にし、人々が川とたわむれる空間を再現し始 めていると言う。  

 

 小野町で川の両側がコンクートになってい くのを見ると何か淋しい。「災害対策の為な んだからしかたがないじゃないか」「公共事 業としての経済効果を考えてみろよ」それは それで認める。だが、何か事業をする時に、 アイデアを出しあって「ああ、素敵だな」と 思えるようなことをすれば、もっともっと「 まち」が楽しくなるんじゃないかと思う。  

 

 川と街の関係という事に関しては以前、河 川改修事業に合わせて街をそっくりそのまま 別の場所に移したどこかの町の事例も聞いた。 小野町の市街地である本町から平館までの夏 井川を見る時、いったいどうしら良いのかなあ といつも考える。『あの市街地を移動させる としたらいろいろな人の利害関係がからみメ チャクチャになるだろうな』と、そんな事を 考えると、いっその事「川」を移してしまっ てはどうかと考え始めた。  

 

 現在の夏井川をそのままにして半分または 全部をふさいで道路をつくり、今のメインス トリートをコミュニティ道路にして夏井川上 の道路と組み合わせて一方通行の環状線にす る。新しくつくる川は堤を創らずに誰でもが 水とたわむれる事ができるようにする。水か さが増すときは今の夏井川の水路に増水分を ながせばいい 。 

 

 私の意見は、ただの思い付のアイデアだ。 きっともっといろいろな人が街のグランドデザインを考えている事だろう。だが、つまら ない意見にも何か明日を創る芽が潜んでいる かもしれない。

 

 現在小野町でも都市計画審議 委員会が発足して市街地のグランドデザイン を検討していると言う。都市計画審議委員会 に参加している町の賢者たちがさまざまなア イデアに耳を傾け、豊かな感性で創造力を発 揮し、50年後、100年後の「まち」のベースを 創ってもらいたい。