チームワークという事


平成4年(1992年)7月20日 OPINION掲載

二瓶 晃一 (執筆当時30歳)

 オリンピックが開幕する。西暦の閏年は米 国大統領選挙とオリンピックの年。今、バル セロナで熱い戦いが繰り広げようとしている 。東京に住む私の知人は、もうすでにバルセ ロナへ行っている。先日、電話した時には6 月にスウェーデンで開催されたサッカーの欧 州選手権を観戦して帰国したばかりだと言っ ていたのだから、ほんとうに「蹴球狂」の極 みだ。  サッカーは今回のオリンピクからプロ・ア マをを問わず23歳以下のナショナルチーム が出場する。残念ながら日本はアジア予選で 敗れ本大会に出場できないが様々な競技で日 本の活躍を期待したいものである。


 スポーツの世界では、日本は欧米になかな か勝てないのが現状だ。現代の競技のほとん どが欧米の生まれである事も大きな原因だが 、何か欧米と日本ではスポーツと言うものの 捉え方に大きな違いがあるのではないか、 そんな気がする。

 

 その中の大きなものにチー ムワークという考え方であると思う。多くの 日本人は、チームワークがいいと言うと「み んなが仲良くしている」と感じる事だろう。 日本では俗に「同じ釜の飯を食う」と言う表 現に代表されるように、お互いを親密にする 事によって「チーム」を作ってゆく。そして、 たとえばチームの誰かが 失敗したとしても 「ドンマイ」と言ってそれを追求しない事が「お約束」になっているし、また、それでお 互いに「口論」するなどという事はまさに タブーである。  

 

 ところが欧米人の言うところの、チームワ ークというのは少し違っている。それはこの 英語の言葉の意味からもわかるように、チー ムとしての仕事・機能がどのように働いてい るかと事に主眼をおくらしい。一人一人が自 分の役割を理解し能力を最大限に発揮する事

 を目標とする。だから、選手はみな個性的だ 。国によっては一つのプレーに対して意見が食 違い練習中に取っ組み合いのケンカをするよ うな事もある。それでも昨日の敵は今日の友 (ほんとうは最初から敵ではないのだが)で ゲームになるとお互いに自分のプレーをする ために機能しあい勝利を目指す。  

 

 この「感情的」なチームワーク「機能的 」なチームワークは、それぞれに長所・短所 がありどちらか一方だけではチームとしてう まくいかない。そういう点で私達日本人は「 機能的」チームワークの理解と行動がどうも 不得手であるように思う。  


 これは、何もスポーツに限った事ではない 。私のまわりの色々な事例を見る時、多くの 人が「感情的チームワーク」の充実した「仲 良しこよし」の組織を希望するためにそのエ ネルギーの大半を組織作りにあてなくてはな らず、いざ事業にとりかかる時に息切れした り、又、仲良しこよしの組織をつくらんが為 に、本来の目的や目標を失ったりしてしまう というのが多いような気がする。  

 

 人間というのは感情の動物であり、組織を作 る上で「感情的」チームワークと言う事を考 えるのは当然だが、もう少し日本人の弱点で ある「機能的」チームワークと言うのも考え て見る必要があるのではないか。そして、案 外それは日本人の国際化のキーポイントに なるのではないかと私は密かに考えているの である。